一章 虫の知らせ

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  無意識に出てしまった弱気な発言を、いつの間にか後ろに立っていたロゼが返した。 死神組織派遣会社には、大きく分けて二つの課が存在する。 一つは前線で魂や悪霊を狩る狩猟課。軋魅もこの狩猟課に属している。 もう一つは回収課。こちらは魂の回収を主な任務とし、現地での情報収集なども行う。 ロゼは軋魅とは別の課にあたる回収課に所属している。 元々は犬だとか狼だとかいう噂が流れているらしい。 実力はあるのだが、かなり自由奔放な性格で手を焼いているという。 「何が嫌になったの?仕事?」 「あ、いえ……その、ちょっと怖い夢を見て」 夢の内容も伝えるべきか迷ったけど、あまり心配もかけたくなかったから詳しい事は言わなかった。 「ふうん。ロゼさんそーゆーの気にしないからなー。怖い夢見ても忘れちゃうし」 「そうですか」 私もロゼさんの様に気にしない様に出来れば、どれだけ楽になれるだろう。 俯きながら軋魅はそう考えて、しかし首を振る。 結局それは、楽な方に逃げているだけだから。 一時的なもの、何も変わらない。 「また暗い顔してる」 少しムッとした顔をしてロゼは言った。
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