一途な乙女の狂った思考回路

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【一途な乙女の戦略】 話をかけられた。 あの憎たらしい女に。 きっかけは乙女がハンカチを落としてしまったこと。 「あの…」 後ろから聞こえてきた声は乙女が最も嫌う女、宝生綾香だ。 「このハンカチ…貴女のですよね?」 「えぇ。わざわざ拾ってくれてありがとう」 迂闊だった。けれど、これはこの女に近づくチャンスだと思った。 乙女は笑顔の仮面を顔に貼り付けて宝生綾香に礼を言った。 ((近くで見れば見るほどブスな女…)) 早く彼をこの女から開放してあげなくちゃ。 乙女の頭にはそれしかなかった。 「貴女…宝生綾香さん、よね?」 「はい…そうですけど、どうして私の名前を?」 「当然じゃない。頭脳明晰で容姿端麗、そんな貴女をこの学院で知らない人なんかいないわ」 「や、やだ!それは周りが勝手に言ってるだけで私は…!!」 頬を染めて恥ずかしがる女は、一般的に見たら可愛いのだろうけど私には媚びてるようにしか見えなかった。 「謙遜しなくていいのよ。本当のことなんだから…それじゃ私は、」 「あっ、待ってください!!!」 女が乙女の右腕をガシッと掴んだ。気持ち悪い。 振り払うのをなんとか我慢して再度女の方へ振り向いた。 「まだなにか?」 「あの…その…私と友達になってください!!!」 「………は?」 なにを言ってるんだコイツは。 私はコイツを殺そうと目論んでいるというのに… 「…市村 華」 まぁ、いい。 「私の名前は市村 華よ。よろしくね、綾香さん」 仲良くなっておいた方が最後のシナリオが美しくなる。
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