彼女とピコ

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 「わたし、産んだ覚えがないんだけど・・・」  彼女困ったように呟くと、”それ”はじっと彼女を見つめる。彼女も見つめ返して、ただ沈黙が落ちる。  しばらくして、”それ”は口を開いた。  「――私に、感情はありません。何かを感じる時には、あなたの感情をお借りします。・・・私は、あなたの強い、一つの感情から生まれたのです」  「感情がない?」 彼女は驚いて、”それ”を生み出したという感情とは何か、考える。  「ねぇ、それってどんな感情?」  「・・・知りたいですか?」  ”それ”は渋るような言い方をした。それが彼女の好奇心を刺激する。  「知りたい知りたい! 教えて!」  ”それ”は少し黙った後で、  「あなたは――誰かを殺したい程憎んだ事があるでしょう?」  問いかけ口調で言った。  「あぁ。」と一気に興が冷めた表情になって、彼女は納得した。
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