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 俊夫は妻の栄子に初めての仕事について熱っぽく語っていた。何でも屋という仕事は自分に向いている、とも言った。しかし毎日依頼があるわけではない。特に仕事の性質上依頼主の秘密を守らなければいけない。口コミで繁盛していくのは恐らく無理だろう。 「いいわよ、私が頑張って働くから。あなたの話を聞いて少し考えが変わったわ」栄子は何でも屋なんて依頼が来るわけがないと思っていたので反対していたのだが俊夫がいきいきと話すのを見て悪くないわ、と思った。栄子はあることをもくろんでいた。  それは依頼のない日は家事一般を俊夫にやってもらうということだ。外で働いてそして帰ってからも仕事もなく家でゴロゴロしている夫のために食事を作るのは何だか理不尽だと感じた。それに何でも屋は文字通り何でもできなければいけない。食事ひとつ作れないようでは依頼に応えられないという最悪の事態になることもなりうる。 「ねえ、あなたにお願いがあるんだけど、いいかしら?」
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