1人が本棚に入れています
本棚に追加
つーか、結局僕は何がしたくて出掛けたんだっけ?
まあ、読みたいマンガが見つかっただけ良しとするか。
僕は滑稽な事を考えながら上着の襟を寄せた。
こりゃちょっと寒い、雨足が強くなったみたいだ。
早く家に帰え……
「……あっ」
誰の声だろう。
可愛い女の子の声が聞こえて、思考を止める。
いわゆるアニメ声って奴か。造られたような現実味のない可愛らしさで、それでも嫌な感じはしない。あまり肉声らしくないような、そんな不思議な声に惹かれて、気づけばそちらを見ていた。
赤いレース付きの傘をさした短い髪の女性だ。
この寒いのに7部丈のチノパンで、白いモコモコの付いた黒のポンチョを着ていた。
上着とズボンが若干矛盾している。
その女はその意味不明な格好で此方を見ていた。
当然、見覚え等ない。
多分僕の後ろに知り合いでも居るんだろう。
知らない顔で向きを直し、何も見てない事にして僕は帰路を再開した。
「ちょ!?無視!?」
……え、まさか本当に僕の事だろうか。いやそんなまさか。
あんな知り合いは心当たりは無い。
ただの思い過ごしだ……と思う。
彼女の知り合い、早く気付いてあげろ。
3m程先の地面を見ながら歩いていたら、それを遮る物が現れた。
ぶつからない様に足を止める。
「うん?」
障害物の正体を知るべく、視線をゆっくり上げた。
「待って」
アニメ声の女の子が立っている。
僕の目の前に。
えーと、僕だよな?
僕に声をかけてんだよな?
誰だ?この人?
「……なんでしょうか」
最初のコメントを投稿しよう!