仮面

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つーか、結局僕は何がしたくて出掛けたんだっけ? まあ、読みたいマンガが見つかっただけ良しとするか。 僕は滑稽な事を考えながら上着の襟を寄せた。 こりゃちょっと寒い、雨足が強くなったみたいだ。 早く家に帰え…… 「……あっ」 誰の声だろう。 可愛い女の子の声が聞こえて、思考を止める。 いわゆるアニメ声って奴か。造られたような現実味のない可愛らしさで、それでも嫌な感じはしない。あまり肉声らしくないような、そんな不思議な声に惹かれて、気づけばそちらを見ていた。 赤いレース付きの傘をさした短い髪の女性だ。 この寒いのに7部丈のチノパンで、白いモコモコの付いた黒のポンチョを着ていた。 上着とズボンが若干矛盾している。 その女はその意味不明な格好で此方を見ていた。 当然、見覚え等ない。 多分僕の後ろに知り合いでも居るんだろう。 知らない顔で向きを直し、何も見てない事にして僕は帰路を再開した。 「ちょ!?無視!?」 ……え、まさか本当に僕の事だろうか。いやそんなまさか。 あんな知り合いは心当たりは無い。 ただの思い過ごしだ……と思う。 彼女の知り合い、早く気付いてあげろ。 3m程先の地面を見ながら歩いていたら、それを遮る物が現れた。 ぶつからない様に足を止める。 「うん?」 障害物の正体を知るべく、視線をゆっくり上げた。 「待って」 アニメ声の女の子が立っている。 僕の目の前に。 えーと、僕だよな? 僕に声をかけてんだよな? 誰だ?この人? 「……なんでしょうか」
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