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それを聞き、少女は一瞬思いつめた顔をした。心がくじけ、足が止まりそうになる。だがそれは出来ない。生きるためには逃げるしかない。
少女は顔を前にあげ、走り続けようとした。しかし、その行動は執事の腕に遮られる。
「どうした?」
「前から来ます。一旦右手の部屋に隠れましょう」
少女は執事に言われ、耳を澄ませる。確かに追っ手の足音がした。このままでは危険だ。
執事に促されて右手を見る。通路の右手には先程の肖像画が飾って辺りとは違い多くの部屋の扉があった。
なるほど、隠れるにはちょうどいいが……
「しかし、相手も隠れやすいとわかるだろう。すぐに捜し出される」
「大丈夫です。部屋のクローゼットに隠れましょう。いざとなればクローゼットの中の影を伝い、相手を闇討ち出来ますから」
「それでも殺したら仲間を呼ばれて二人いっぺんに場所がばれる」
「考えるのは後にしましょう。とりあえず中には誰もいません。早く中へ!」
そう言われ、少女は執事と一番近くの部屋に入り、その中にあったクローゼットの中に隠れた。
クローゼットはちょうど人が2人が収まるギリギリの広さだったのでなんとか入る事が出来た。
入ってすぐに複数の足音が聞こえて来た。
「ち、見つかんねぇな。なんであんな力がないガキにこんだけ逃げきれるんだ?」
「一応、元お嬢様だ。言葉遣いくらいはせめて考えろ」
「でも、元でしょ。もういいじゃないそれくらい。本当に律義よねあなた。」
やって来たのは元部下の数名だ。声から察するに男2人と女1人ようだ。
少女は震え、クローゼットの中で執事の体を強く抱きしめる。執事の方も自身のお嬢様を強く抱きしめ、声を潜める。
「あの半人間はリューク様の言う通り私たちの主になる器ではないわ」
「まぁ、そうだかな」
律義な男は女に言われ、渋々納得した。
この時、少女は女の言った言葉でまた涙を流してしまっていた。
半人間。それが少女の心にずっしりと響いていた。
「そんなことはいい。とりあえずここいら一帯は部屋だらけだ。隠れるにはちょうどいい。早くこの辺りを手分けして捜すぞ」
雑そうな男は周りを促す。
「そうね。でもおそらくあの子は1人ではないわ。何人かはあちら側についているけど複数で守ってたらすぐに場所がばれるわ。かと言って1人でこんなに逃げられない」
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