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「さて、次は…。」
とうとう1時間目が始まってしまった。運悪く現代文の授業だった。読むことも書くことも出来ない私は、赤ん坊のよう。一番後ろだしまずこの私が指されるはずがないと思っていた。
「渡部さん。P.92ページの3行目から読んで下さい。」
「えっ…。」
思わず目を見開いた。当然だ。まさか指されるとは思ってもみなかったから。でも今の私には教科書がない。忘れたわけではないが説明もしにくい。
「あら、教科書忘れたの?ノートもないじゃない。
あなた、学校に何しに来ているの!?」
忘れたのではなくこいつらに捨てられたのだ。反論してもこいつらは平気で嘘をつく。だから私は黙って従っていればいい。
その日、私は一日中怒られた。
「…むぅ…ない。」
今は放課後。そして私は、消えてしまった教科書とノートとペンケースを捜索中。探している場所はゴミ処理場。運悪く今日はゴミの日で、生徒はたまったゴミ袋を捨てに行ってしまったのだ。今日は厄日だ…。
空も暗くなり始め、生徒たちも下校していく。私も18時までには見つけて帰らなければ。もう一度、教室の方を探そうと思い校舎へ入った。廊下をトタトタ走ってドアの前に立つと、中から何か物音がする。不審に思ったが迷うことなくドアを思いっきり開けた。
するとそこには…奴がいた。
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