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歩くのは好き。前にも言った通り、毎日見る景色が変わるからだ。でも夜の景色は好きじゃない。別に嫌いというわけでもない。ただ暗くて何も見えないからつまらないだけ。
私たちがコンビニの前を通ろうとした時、また赤井くんが私を止めた。
「ちょっと、ここで待ってて。すぐ戻るから。」
そう言ってコンビニの中へ入って行った。彼に言われた通り、おとなしく立ち止まった所で待つ。外から中の様子を見る限り、何かを探している様子だった。10分程で戻って来た。白いビニール袋を持って。
「はい。お腹すいてるだろうから、パンと飲み物買って来た。」
私は赤井くんからそれを受け取る。中身を確認すると、チョココロネと牛乳が入っていた。今日のお昼ご飯と全く同じものである。何故、彼はこの2つを買ったのだろうか。
あるいは、ご飯のことを知っていたのだろうか。そもそも、家に帰ったら自分で料理をして食事をするということも知っていたのだろうか。分からない。
「家で親が作ったもん食べたいかもしれないけど、これも食べろよ。体、弱いんだろ?」
「…うん。」
「渡部さんの好きなもの分かんなかったから、これ買って来たけど…。今更ながら、大丈夫?」
「…甘いものは好きだから平気。」
「そか!良かった。」
ニッコリと満面の笑みでこちらを見た。その時私は、心が熱くなるような感じになった。うつむいて私は言った。
「ありがとう…。」
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