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突然のことで変な声を出してしまった。しかも、顔は呆気に取られた表情をしているだろう…いやしている。
「…何をしている?」
「いや…これを届けようと思って…。」
「嘘だな。今日の授業でバレてしまったから、元の場所に戻す魂胆なのだろう?」
しどろもどろに答えるとビシッとした発言をされ少し驚いた。でもやったのはオレじゃない。そのことを必死に伝えようとする。
「そんなんじゃねーよ。
あいつ…伊藤が渡部さんの教科書を掃除用具入れの中に捨てているのを見たから…。」
「…。」
「ホ、ホントだよ!でもいつ渡せばいいか分かんなくて…。」
「…まぁ良い。だが礼は言わない。
なにせそれを見た時の証拠が君にはないのだから。」
オレは嘘をついた。見たのではない、聞いたのだ。ここでもオレの嫌な一面が出る。そして彼女の言う通り、証拠がない。黙って受け取るしかなかった。
「用はそれだけか?」
「えっ?あ、あぁ。」
「じゃあ、そこをどいて。」
そう言って歩き出した時、彼女は倒れた。
「渡部さん!?」
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