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また学校でと言って、私は電車のホームに行きちょうど来た池崎行きの電車に乗る。宇川から私が降りる駅まで30分はかかるのでいつも暇しているが、この時に関しては全くそんな気にはならなかった。
今日一日の出来事を何度思い返しても、笑みがこぼれそうなくらい楽しかった。こんなに楽しい気分になったのは、あの日以来だ。
"終点、池崎…"
(降りなきゃ…。)
少し重い荷物を持ってやっと着いた池崎駅に降りる。駅から歩いて20分後、自宅へ着いた。勿論、家には誰もいない。
「ただいま。」
それでも私は、私が帰ったことを誰もいない暗くしんとした部屋に向かって言う。少し寂しい気持ちで中へ入る。
手洗いとうがいを済ました後、母とおば様の置き手紙も見ず真っ直ぐに自分の部屋へ向かう。そこで今日買って貰ったキーホルダーを取り出そうと袋を見ると、一番目につくのはあのフリルのついたスカート。
「…。」
自分の意思なのかあるいは、無意識なのか、私はそのスカートを手にして鏡の前に立ちそれを合わせてみる。
今はこのスカートに合わない格好をしているが、母に言えばこのスカートに合わせた洋服を出してくれるだろう。
「…似合うかな…。
……はっ!」
私は何を言っているのだ。これは私の意思に反することだ。そう思えば思う程、顔は火照っていく気がした。
そして、これからも何事もなく平和な日常が続くとこの時までは信じていた。
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