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言ったのは私ではない。赤井くんだ。手には苺牛乳を持っている。昨日といい今日といい、彼は苺牛乳が好きなのだろうか。色々考えていると彼が手招きしている。
何かと思い近寄ると彼は何処かへ歩き出した。背中から察するに、何も言わずついて来い!と言わんばかりに。
着いた先は屋上。屋上まで来てしまったら購買まで戻るのに時間がかかって終了してしまう。早く用事を済ませて欲しい。
「えと…渡部さんだっけ?お昼持って来た?」
「…。」
無言で頷く。
「これ、昨日のお返し。お金いらないから。」
彼から渡されたのは苺牛乳。今日一日だけで何回言ったか覚えていないが苺牛乳が渡された。
「…どうして?」
主語もなく聞いた。その時、私は自然と首を傾けていた。そのため、片目は少し見え、片目は前髪に覆い隠された状態になった。
「お返しのことか?まぁ、そりゃオレが無理矢理取っちまったからな。」
「あぁ…。」
一応、悪く思っていたらしい。とりあえず納得。だがこちらとしても、お金を払わないわけにはいかない。ブレザーのポケットに手を突っ込んで120円を取り出し、それを赤井くんに渡そうとすると手で拒否られた。ずいずいと押しても拒否られた。
「何故受け取らん。」
「言っただろ?お金はいらねぇって。」
無理に渡しても彼は拒否るだろう。だから私は120円を再びポケットにしまった。彼はまたなと言って屋上を去って行った。私はいつもの場所で昨日と同じクリームパンと苺牛乳を食した。
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