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「それで、お父さんは何でここに?」
「ちょっと雫に用があってな。まぁ用はすぐに済んだんだが、帰ろうとしたら浩介と鉢合わせしてな。そんで一緒に酒を飲んでたのさ」
そう説明する隼人さんだが、隣に居る涼香の笑みからは、黒さが全く消えていない。
「そうなんだ」
「おう、久し振りに会ったからな」
「へー…。でも、久し振りだからって、こんなにお酒を飲むのはね」
二人の後ろに広がる酒瓶、酒樽を指差す。
「いや…ははっ…」
顔をひきつらせながら隼人さんは笑う。
「このことは、お母さんに報告するから」
「ちょっと待って!お願いだから待って!香織に言うのだけは待ってくれ!!」
振り向いた涼香に飛びつき、すぐに土下座しながら懇願する隼人さん。
父親の威厳なんてものは微塵もない。
自分の娘に土下座するって、隼人さんってもしかして、家族間の力関係で一番下なのか?
「浩介さん、雫さんは居ますか?」
そんな二人を華麗に無視する竜也。
「雫なら、執務室で書類と睨めっこしてるよ」
「そうですか」
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