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「武秋!? …盗み聞きなんて、たちが悪い」
「人聞き悪いこと行ってんじゃねぇよ。何度か声はかけてやったのを、無視してたのはお前の方だろうが。たくっ」
この言葉が悪い男・武秋は、着物を少々着崩し柄の悪さが滲み出ているが、盗み聞きの様な曲がった事が嫌いな正義感の強い男。
まったく、笑える話でそれを言ったなら直ぐにへそを曲げてしまう。
そんな様子の武秋に軽く謝り要件を聞き出す。
「見世だしの準備だ」
「もう? 今まだ…」
「東北の篠原様だったとしてもか? また怒らせるのか?」
「うっ、ご隠居様…」
篠原のご隠居は時間に五月蝿い。
いくら遊女の指名が重なって遅れただけで、機嫌が悪くなる。
それだけ、きちんとされた方なのだろうけど堅すぎるのも面白みにかける。
と、言いたいところだけど機嫌が良ければ、冗談ばかり言うような愛嬌のある老人。
まぁ、他のお客を相手にしているよりかは気が楽でいい。
だから「早くその着物を脱げ」と言われて襦袢になるのを拒まなかった。
いつもなら、拒んで武秋を困らせてやっている。
まぁ、そうすれば無理やり脱がされるだけだが…。
それが気兼ねなく出きるのは、小さい時からの仲だからなのか。
それを考えているのも知らずに、手際が良い武秋は黙々と私を着飾らせていく。
この派手で重たいとしか感じ差せない着物を。
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