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山内くんはすかさずレポートをひっつかもうとしたが、僕は卓球部で鍛えた動体視力をフルに使い、さっと横からそれを奪った。まさかそんなことされるなんて思ってもみなかった山内くんは、ぽかんとしている。
そんなに大口開くなよ、口臭がやべぇんだからよ。
「くれるんじゃないのかよ?」
僕は首を縦に小さく振った。それは勿論である。このレポートは山内くん用にわざと馬鹿っぽい文章で作ってあるし、間違っても「優」を取れる代物ではない。
こんなものを僕が持ってて何の得がありますか?あるわけありません。あってたまりません。
黙りこくる僕の隙をついて山内くんが手を伸ばして来たが、剣道で鍛えた反射神経で軽くかわしてやった。
「ただでやる義理はないよ」
僕はさらっと言った。山内くんのひやっとした目が僕にガンをくれた。なんとも意地汚い男だ。けど、それは一瞬で、すぐに山内くんはへらっとしてこう言った。
「合コンする?」
むかっとしてレポートをファイルにつっこんで立ち上がる。
「文学部の女だぞ。良いのか」
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