◇コナタ◇

5/8
前へ
/12ページ
次へ
ヘボ学部のくせに課題提出が多い。中世思想家の考えと、現代史における文章の成り立ちの比較とか、そんな。 わけがわからない。 けど、点数欲しさに僕はレポートを書き殴り、いつも真面目にそれを提出していた。 そして、そんな僕に目を付けたやつが居た。 「コナちゃん」 馴れ馴れしく僕の昔からの愛称を呼ぶのは、山内くんという男だ。 「レポート出した?」 山内くんが口を開くとマルボロの臭いがする。愛煙家、山内くん。口臭と交じりて、マルボロ最悪に醸し出し悪臭なり。 「出したけど」 口を出来るだけ開かないようにして答えた。 「うはー、見して、見して」 くさい、くさい。くさやのほうが多分ましだ。君は歯を磨いているのか。そして、なんでこんな口臭野郎に彼女が居るのだ。ちゅーとかしてるなら奇跡だ。 「いや、そんな必要はないよ」 顔を背けて僕は答え、鞄から半透明なファイルを出した。そこから更にレポート用紙を出した。 「はい、これ山内のために書いたから」 山内くんはきょとんとする。 「お前、俺のを丸写しにするだろ。そんなことされたら、俺の成績に響くんだよ」 ひらりと机の上にレポート用紙が滑った。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加