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埃にまみれた村の倉庫――
長老に言われ、占い用の羅針盤を取に来た僕は、偶然足元に落ちていた文献に目を引かれる。
放置されて随分日が経ったのか、汚れに塗れた表紙。
所々虫に喰われた痕があるくたびれたページを捲り、時が経つのも忘れて熟読していた。
……凄い
伝承と歴史を噛みあわせ、独自の解釈でリンクさせた書物。
書き手は余程精通していたのだろう。
僕から見ても内容に違和感は無い。
次へ次へとページを捲り、内容を理解しては一人頷く。
どれだけそうしていただろう?
気が付けば――
倉庫の上部に設置された窓から月明かりが射し込み、僕の頬を優しく照らす。
『ライル!! 何処だーっ!!』
聞き覚えのある怒声にハッとし、文献を懐に捻じ込む。
慌てて扉から出ると、怒りで顔を真っ赤に染め上げた長老が、視線鋭く僕を見据えた。
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