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この村で生きる事に何の不満も無い。
大都市に比べ、街灯設備さえままならず、太陽や月に合わせて寝起きする生活も、本来あるべき姿なのだろう。
だけど――
ここには”何も”無い。
僕らは生きているのだろうか?
時折りそんな疑問を抱くほど、毎日は平穏で不変だ。
そんな生活を夢見る者もいるだろう。
だが、ここで生まれ育った僕は、変わらない日々に退屈していた。
だからといって、切っ掛けも無く動けるほどの勇気は無い。
様々な思いが頭を駆け巡り、気づけば長老の屋敷に辿り着いていた。
扉を開け恐る恐る中を覗くと、待ち草臥れた様子で長老は座っている。
「ライル。こっちにきて座れ」
「――はい」
板張りの床に敷かれた座布団へ、促されるまま正座した。
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