1214人が本棚に入れています
本棚に追加
/133ページ
張ったテントは一人用で、中に入った段階で僕は気づいた。
……アネス何処で寝るの?
まさか同じテントで寝るつもりだろうか?
さすがにそれは頂けない。
「いやいや……」
自問自答していると、入り口からアネスが覗き込んだ。
「何ブツブツ言ってんだ?」
「い、いや……その……」
「――ったく。さっさと寝ろ。見張りはアタシがしといてやる」
そう言って顔を引っ込めたアネス。
どうやら外で野営地点の見張りをするらしく、僕が考えていた内容は杞憂に終わりそうだ。
……先に言って欲しいよ。
ため息を吐き、持参した毛布にくるまって横になる。
新品の毛布は肌触りが良く、それに身を委ねていると次第に瞼が重くなってきた。
「おやすみ……」
言った所で返事は無いが、誰にでも無く呟いた僕は、夢の中へ落ちて行った。
意識が飛びかけた最中、外から小さく聞こえた返事。
『おやすみ。ライル――』
その声を最後とし、僕は完全に夢の世界へ旅立った。
最初のコメントを投稿しよう!