男の旅路に危険はつきもの

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 門番に会釈しながら脇を抜け、街に足を踏み入れるや否や、視界を埋め尽くす程の人。 ……酔いそう。  さすがは主要都市といった様子で、誰しも足早に目的地へ向かい周囲の人へ目を向けない。 それが何となく冷たさを感じさせるが、この街はそういう街なのだろうと黙殺した。  街の建造物はモダンなレンガ調の建物や、独創的な木造建築まで様々。  通りは数センチ四方のタイルが張られており、時期により違う色の花を咲かせる”シーズンツリー”が街路樹として植えられている。  街の中央にあたる場所は、細やかな彫刻の施された噴水が設置して有り、公園として機能していた。 初めて見たアスウェルの街は、存外に綺麗で整備されている。 「おい。ライル。行くぞ」 「あ、うん」  景観に魅入り足を止めていた僕を、アネスが促して歩き出す。 向かう先は冒険者の集まる酒場。  先日依頼された一件について、情報を得るために訪ねる。 人の多い大通りを抜け、閑静な裏路地に進むと、地べたに腰を下ろした人々が珍しそうにこちらを見た。  アスウェルの街は華やかで、思わず見とれてしまう程に整備されていたのだが、対して裏路地はかなり荒れている。
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