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こちらを見る人々の服装は御世辞にも真新しいと言えず、当然の様に穴が開いたシャツや破れたズボンを着ており、切羽詰まった生活を送っていると想像させた。
……危ない気がする。
お金を奪われたりしないだろうかと、不安に思いながら進むも、これといって何も手出しはされなかった。
「ここだ。行くぞ」
慣れた様子で看板の傾いた酒場、”ミッドルの酒場”へ入ったアネス。
風が吹けば倒れそうな程にくたびれた酒場だが、本当にここが冒険者の集う酒場なのだろうか?
……不安だ。
苦笑いをしながら入店を躊躇っていると、入り口から顔を覗かせたアネスに「早く来い」と叱咤された。
仕方なく中へ入ると、内装は意外と綺麗で掃除も行き届いており、僕は人知れず胸を撫で下ろす。
「おう! 久しぶりだなミッドル!」
カウンター前の空いた席に腰を下ろしたアネスは、笑顔で店員へ話しかけた。
名前からして、この酒場のマスターだろう。
「お? アネスっち! 久しぶり!」
「――アネスっちは止めろと言ってるだろ?」
「またまたー……気に入ってるくせに」
「…………」
何処か人をからかう調子のミッドルに、アネスは黙ってため息を一つ。
隣に座った僕は、ミッドルに簡単な自己紹介をした。
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