3人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
僕は裸だった。服を着ようとするが、僕の服は全て小さくて着る事が出来ない。仕方なく父親の服を適当に身に付けると、玄関に向かった。
そして久し振りに見る昼の光に目を細めながら、裸足のまま外に足を踏み出す。すると一人の美しい女性が、嬉しそうな表情で、僕に手を振りながら近付いてくる事に気付いた。
リカちゃんだ。
外見の年齢はまるで違うのに、僕はそう確信した。
僕も彼女に歩み寄る。
彼女の肌は血色が良く、まるで生者のようだ。でもそれは僕も同じで、青く浮き出た血管に力強い血流を感じる。
滑らかな肌に触れると、柔らかく確かな温もりがあった。
「リカちゃんの冷たい手を握るのも好きだったんだけどな」
そう言うと楽しそうに笑う彼女は、アンデッドの時と何も変わらない。僕も笑うと、太陽の光を浴びて美しく映える彼女の顔に、自分の顔を近付けていった。
アンデッドだった人々は生者になっていた。
生者だった人々は、僕らが眠っている間に地上から姿を消していた。
何があったのかは分からないし、知りたいとも思わない。
ただ僕は、あの担任も居なくなったという事実が、単純に嬉しかった。
最初のコメントを投稿しよう!