満たす。

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『綺麗な所ね』 整備された芝生の上に等間隔に置かれた白い石で出来たアーチと名前が書かれた石碑がある。 メアリーの眠る墓の前。 リナが花束を添えた。 『景色もいいね』 小さな街並みと遠くに海が見える場所。 〈恋人と犬と友人を連れてきた〉 メアリーに紹介された4人は聞いたことがない言葉だった。 〈ずっと…来れなくて悪かった…待っててくれて有り難う〉 エディが兵悟の傍らに立つ。 『兵悟さん、何て言ったの?』 兵悟の顔を覗き込むようにして、目線を合わせる。 エディを見て、涼やかに笑う。 『裏切ることがない犬』 『―…えぇ!?』 『ちょっと?!聞き捨てならないわね?私も犬なの!?』 リナが大股歩きで迫ってきた。 『友人』 『…ありがと』 リナは後ろを振り返ってシロウとクロウを見た。 『俺たちは兵悟の犬だよ~』 ニコニコと白い歯を見せながら、肯定するクロウ。 シロウもクロウと同意見で何も言わない。 『いいの!?犬って呼ばれて?』 『兵悟しか言わないから大丈夫だよ』 それは兵悟以外に言えるものではない。 それにどう“大丈夫”なのかわからない。 『―そう』
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