一城の姫。

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一城の姫。

父は厳しかったが頼もしい人だった。 母は陽気でよく笑う優しい人だった。 産まれた時から父以外の男に触れられるのが嫌だった。 気持ち悪いとさえ思っていた。 幼稚園と小学校には行かずに家で独学と女性限定の教師を雇って貰い、日本語以外の言葉を知る。 体力もそれなりにつけた。 武術は父からしか教わらない。 教材は全て男だから観たくもない。 中学生になると大学までの女子校を選び、通った。 十数年振りの人々で、酔ってしまい、醜態晒してしまう。 ※客観的に見ると“身体の弱い可憐な人”だ。 人々に慣れてくると徐々に“男前”が発揮され、大学生にまで名が知れる。 頭脳明晰、眉目秀麗。 家柄も申し分ない。 お見合いが殺到しはじめるが、父親も父親で上司だろうがなんだろうが断り続けた。 地位を脅かされたら“辞表”を出した。 これには大勢の部下からの反対があったためにお見合い話はなくなった。 直接会うことは出来ない環境に身を置かれていた。 学校の敷地内に建つ寮に入り、週末は父の送り迎えがある。 親戚一同に会う日は部屋に閉じ籠るか父か母にベッタリくっついている。
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