一城の姫。

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よく父の口に上る“目黒”という名前。 「“楽しい”…がく、か………お?…」 その男、楽の頭に小鳥が止まった。 彩姫の部屋まで聴こえないが、小鳥はちょこちょこ動きながら囀ずっている。 「凄いな!?人間に近い所に棲んでいるとはいえ、野鳥が人の頭に乗るなんて」 1分経っても、小鳥は逃げる様子がない。 「彩姫様。お茶の用意が出来ましたよ、そちらで召し上がりますか?」 ワゴンを窓際まで押してきた。 「天気もいいですし、風も微風です」 「……そうだな…そうする」 純はにっこりと笑って、準備に取り掛かる。 バルコニーの椅子に座り、待つ。 手摺は鉄で格子状にしてあり、角度も四角い穴から先が見えた。 「純…あいつは何羽頭に乗せる気だろうか?」 「彩姫様!お客様に対して“あいつ”などと仰ってはいけませんよ」 言葉遣いが悪いのも今に始まったことではない。 けれど、窘める所は窘めていいと彩姫の父親である勝に言われていた。 「わかった」 「……ホントに沢山集まりましたわね。寝ているのでしょうか?」 「……さぁ?」 テーブルクロスを敷き、皿が並べられる。
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