一城の姫。

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「お顔も良かったですし!彩姫様も16歳ですからね!結婚できる歳ですもの!!」 「………なんでそんなに楽しそうなんだ……」 3歳年上の純の方がキラキラと顔を輝かせた乙女らしい反応。 彩姫は幼少の頃から自分は結婚しないと思っている。 会社を立ち上げる計画も考えているのだ。 一般の社会には勤められないからだと自覚している。 桐生純は産まれた時から神山家に仕える運命にあり、幼い頃から両親の躾は厳しかった。 それでも、兄が居た分、期待度が薄かったのも事実。 そして、待望の赤子が産まれる。 兄が世話役として付くはずだったけれど、その赤子はなぜかしら“男”を拒絶する。 兄は外され、妹が遊び相手になった。 女児は可愛かった。 人形や他の誰よりも愛らしい顔立ちをしている。 成長するにつれ、更に美貌は際立ち、輝いていく。 理想とするお姫様が目の前で動き、喋るのは嬉しかったが、容姿を裏切るしゃべり方をした。 それも気にならないくらいに一緒に過ごしている。 小説や童話のお姫様やお嬢様が逆に物足りなくなるほどに。 ある日、兄が〈旅に出る〉という書き残しをして、出ていった。
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