逆の真実

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 思わず壁を殴った。手がジンジンとして、骨が軋むのが伝わってきた。  いまさら、思い出したって何にもならないじゃないか……。  気が付けば、もう一時間以上ずっとシャワーを頭から被っていた。体がのぼせてきて、頭がボー、としてきた。 「……出るか」  髪から滴り落ちる滴を振り落とし、体を拭く。  腰にタオルを巻きつけて、着替えを出すためにいったん、部屋に戻る。――刹那、入り口のドアが開き、見慣れた顔の少女が目に入った。 「やっぱり、だめでし――!」  ……目があった。なんだろう……はずかしいを通り越して、どうでもよくなった。  バタンッ! というトビラの閉まる音が聞こえたが、無視して着替えを取り出す。 「……入っていいよ」  着替え終わり、マイを部屋に招く。正直、気持ちは重たいままだったが、マイには悟られないためにも、いつもの自分に戻るように、頭の中をリセットする。 「お、お邪魔します」 「…………どちら様?」  ちなみに俺が、どちら様? と言ったのは外見ではなく、内面の方だ。外見は寸分変わりないマイだったが、明らかに内面が変わっていたからだ。 「失礼ね! 私よ!」 「おお! マイか。性格が変わりすぎていて、誰かが乗り移っているのかと思ったぞ」 「今すぐ、真っ二つに切り裂いてやりたいわ」
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