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「最後に聞いておく」
士さんが僕に真面目な顔で聞いてきた。
「この扉を開けてしまえば後戻りは出来ない」
後戻り、つまり平和な日常に戻るということ
「死ぬ可能性はゼロじゃない。もしかしたら死ぬより辛い事が待っているかもしれない」
士さんの視線は一瞬だけ悠奈の方へ向けられた。
視線を向けられた悠奈は気づいていないようだ。
「今ならまだ引き返せる」
色々と制限は付くけどな、と言葉を繋げる。
まるで捲き込みたくないように
「選択はお前の自由だ」
無理強いはしないらしい
「どうする?」
さぁどうしょうか
日常か非日常か
平民か軍人か
普通に考えりゃ僕は戻れば良いんだと思う。
別に他人を救いたいなんて思いはしないし、悪を憎む気持ちもない。
だからと言って人を傷つけたいわけでもない。
別に生前に未練と呼ばれる物も無い。
恋人も居なかったし、家族と呼ばれる人間も居なかった。
強いて言えば中の良い親友を残して逝ったのが辛い位だ。
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