†巡†

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  そして、気付くと 一日の疲れと クロアが居る安心感から いつの間にかクロアの腕の中で 眠っているロア。 クロアはロアを 起こさないよう慎重に 自分の傍らに横たえ、 記憶を喪う前から変わらない 無垢であどけない、 無防備なロアの寝顔を見詰める。 ロアは決して口には出さないが、 クロアは知っている、 ロアがクロアを求めて眠る理由。 毎晩、夢に魘され、 酷い時には硬直し 息を乱し目覚めるロア。 怖い夢を視たのかと訊ねても、 ただ、頭を横に振り 否定するだけで、 記憶に関する内容しか語らず、 また、思い出させるのも 躊躇ってしまう程の ロアの様子に、 クロアは、 問い詰める事が出来ないでいた。 起きている時も、 眠っている時でさえも、 恐怖と云う感情に 捕らわれ続けるロアの心。 どれほど護りたくても ただ、側に居るだけしか 出来ないクロア。 それでも、 今は側に居る事がロアの、 最愛の助けになるならば…、 「側に居る…。」 声を抑えたその囁きが、 僅かな救いになれと     ネガイ 心からの想いを込めて、 クロアは眠るロアを 大切に抱き締めた。  
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