†巡†

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  遠い遠い、記憶の夢。 少年は澄み渡る空の下、 駆けていた。 年の頃は10歳前後の小柄な少年。 背の中程まで伸びた 銀月の髪が揺れ、 その背中に不意に掛かる、 「あにうえー。」 小さな幼子の拙い声。 “兄”と呼ばれた少年は 慌てて足を止め、立ち止まり 声の方を振り返ると、 「まってくださいー。」 小さな小さな幼子が 息を切らせて駆けて来た。 明るく柔らかな金の髪に 澄んだ青水晶の瞳の幼子。 「うわッ!!ごめんッ!!ごめんね…。」 小さな手足で兄である少年を 懸命に追い掛けて来た姿に 少年は驚き、慌てて 駆け寄る体を抱き上げる。 すると、 弾む息のまま嬉しそうな笑顔で 「あにうえ、あげます。」 置いて行かれた事を 気にする様子もなく 手にしていた白い華を 少年に差し出す幼子。 「良いの?」 「はい!!」 幼子の無邪気な笑顔に釣られ 笑顔を浮かべる少年。 「あにうえは、おはながにあいますッ!!」 元気に告げる幼子の言葉。  
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