†巡†

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  しかし、 だからこそ、 「その記憶には………ディフェル様とロアだけしか居なかったのか?」 記憶の一部が 修正されている可能性があった。 夢で視ていれば、 喪われた存在を脳裏に過らせる クロアの質問。 ロアを怯えさせたくはないが、 他の…、 特にロアの記憶から 喪われてしまった存在に 記憶の訂正をさせるよりは 自分自身の手でする事を 選ぶクロア。 「えっ?……あ…うん……たぶん…。」 クロアの問いに 自信の無い声で応じ、 そのまま縋るように 無意識にしがみついてくる、 震えた体。 それだけで伝わる 本当の答え。 「―ッ……大丈夫か?」 零れそうになる 謝罪の言葉を呑み込み、 様子を気遣う言葉を掛けると 「ん…だい…じょうぶ…。」 クロアの胸に顔を埋めたまま 拙い仕草で頷き返す。 優しく抱き締める温もりに 心地よさそうに身を任せ、 ゆっくりと 安心感を取り戻て行くロアの姿。 「おやすみ。」 「ん…。」 コメカミ 蟀谷に 触れるだけの口付けを落とし、 耳許で囁けば、 安堵の吐息を溢し ロアは再び、 深い眠りに落ちて行った。  
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