†兆†

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  今にも 押し潰されてしまいそうな心。 そして、 それは、 セキルの事だけではなく…。 独りになってしまえば、 嫌でも甦る、 「――ッ!!」 『………………恐い…。』 聖域“聖殿”と云う場が 本当は恐ろしいと 感じ続けている思いまで 重なり始める。 初めに目覚めた時には クロアの事だけしか 分からなくても 何も恐くなかった。 それが、 一つを知り、 一つを思い出す度に 恐怖が生まれ 心に蓄積されて行く。 どれ程、 明るく楽しい 幸福な記憶を取り戻しても、 『ここは……すごく…恐い…。』 「…クロア…。」 泣き出してしまいそうな声。 消せない恐怖が ゆっくりと ロアの心を追い詰める。 クロアが聖主からの話を終え ロアの元へ戻ると、 数人掛けのソファーで独り、 膝を抱え泣いているような ロアの姿があった。  
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