†兆†

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  「ロ…。」 「クロア…!」 入室する扉の音に反応し、 顔を上げ、 クロアの姿を見ると 不安を宿しながらも微笑むロア。 「えっ…と、…おかえり?」 明るい声で話し掛け、 足早に近付くクロアを見上げ、 不安を圧し殺そうとし、 「ただいま。」 クロアがロアの不安に 気付かぬ振りをして 返事を返せば、 微かな安堵混じりの溜め息を 小さく落とす。 少しでも クロアに心配を掛けまいとする ロアの姿。 そんな事をする必要は無いと どれ程、思っていても、 不安や恐怖を無くす為の 今のロアの望み知りながら ただ、 傍に居る事しか出来ない クロアは、 何も言う事が出来なかった。 「ロア。」 「なんだ?」 「明日から…“セキル様”が一緒なら、この棟以外にも出入りできる。」 ロアの隣に座るのではなく、 正面に跪き、 聖主からの話しを伝えるクロア。 セキルと一緒であれば、 今、隔離されている棟の 敷地から、 自由に出る事が出来ると云う話。 勿論、 “聖殿”から出る事は 出来なかったが、 行動の範囲は拡がる決定。  
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