†兆†

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  第6階層の西に位置し、 中世的で荘厳な造りの神殿。 その本殿から続く 内殿、最奥にある聖司官執務室。 今はロアの代理である 前聖司官レティスが管理する その執務室に、 セキルが聖殿へ帰った事を 報せるため、 中央組織から急ぎ訪ねてきた ディフェルの姿があった。 「セキルが聖殿に…。」 ディフェルからの報せを聞き、 深刻に呟くレティス。 本日の昼過ぎに、 セキルが聖殿に帰った事で 初めて、 聖殿への帰郷の許可が 下りている事を知った ディフェルは、 「次期の記憶を取り戻すには確かにセキルが必要だが…まさか、聖殿に戻るとは思ってなかった…。」 完全に予想外だった事を伝え、 レティス同様、 深刻な面持ちで黙り込む。 僅か9歳の時に ディフェルの実父である ミレアの元に 次期熾天使長と成る為に 養子に出されたセキル。 以来、 第5階層のミレアの屋敷で ディフェルと共に 暮らしていたセキルが 今更、聖殿へ帰るなど、 思っていなかった二人。 「聖主様が許可なされたのなら仕方がない…。」 “聖殿へ帰った”と云う事は そこに住み留まる為の 聖主の許可があると云う事。 セキルの帰郷は 諦めるしかないレティス達。  
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