†兆†

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  ――聖殿 第6階層の神殿から、 ロアの管理する居住の棟へ 何も知らないフィリルが戻ると、 時同じく、 ロアの元へ向かう途中であった セキルと鉢合い、 「えッ!?……あ…れ?…セキル様…!?」 思わず驚き、 フィリルは呆然と 立ち尽くしてしまっていた。 「そんなに驚く事か?」 フィリルの反応を 責めるでもなく やや苦笑気味に笑い 呆れるセキル。 「あ…すみません。なんか…セキル様が聖殿に居る印象が無くて…。」 考えてみれば 聖殿はセキルに取っても 生家なのだが、 フィリルが知る限り、 片手で数えられる程しか 聖殿では見掛けていないセキル。 「まぁ…確かに、ここに帰ってくるのも久方ぶりだからな…そう思われても仕方ない。」 フィリルの言葉を認めつつ 何年振りの帰郷になるのか考え、 途中で止めながらセキルは呟き、 「え…と、帰ってとは…。」 その呟きから セキルが今、聖殿に居る意味を フィリルは察した。 「兄上の記憶が戻るまでの帰郷だ。」 「………………………。」 フィリルの考えを明確に肯定し 穏やかに微笑むセキル。 普通に対話しているだけでは 昔と何も変わっていない セキルの様子。  
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