†兆†

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  ロアに取っての唯一の情愛が 身内にしか 向けられない現実の中で 父に告げられた話の内容は ロアに取って、 ―“狂いの大罪”― 「―――ッ!!」 最も愛する家族を ロアの最愛の存在を 犠牲にする宿命と云う名の罪業。 気付けば、 いつの間にか脚が止まり、 視界がぼやけ揺れていた。 これから先の未来を考えても、 聖域、聖殿から出ることは 出来ない自分。 そうなれば 待ち受ける宿命の未来は、 一つしかなく、 父や叔父も それが宿命だと 暗黙として認めていた。 回避する為の術は たった一つ。 『私が…。』 ロアが、 『…………消えれば…。』 聖域から自分の存在を 消してしまう事。 安易な答えだと分かっていても 回避する道はそれしかなく、 「弱い…兄でごめん…。」 澄んだ雫と共に零れ落ちた 呟きは、 ロアの最愛の“弟” ―セキル―の面影に向けての    コトバ 最後の贖罪だった。  
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