†兆†

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  ――暗い室内。 「ッ!!あッ…ッ!!」 「ロアッ!?」 「アッ!!…アァァァッ!!」 目覚めたと同時に上がる叫び。 「ロアッ!!」 「ッッ!!あッ……ヴア…あぁッ!!」 「ロアッ!!夢だッ!!全部、夢だッ!!しっかりしろッ!!」 慌てて腕の中に抱くロアを キツく抱き締め、 何度も声を掛け、 落ち着かせようとするクロア。 「――ッ!!ヴ…ッ!!ッ!!」 「ロアッ!!」 それでも錯乱し、 泣き叫ぶ悲痛な声を上げる ロアに、 「アァッ!?ヴッ…んッ!!……んん…。」 クロアはこれまでの迷いを棄て 深く口付ける。 突然の事態に驚き、 抗いの抵抗を見せる 細い両腕を寝台に押さえ付け、 落ち着きが戻るまで 続ける、 長く深い、恋人の口付け。 「ッ……ふ…ァ……。」 軽い酸欠状態も手伝い、 漸く、ロアが 大人しくなったところで 両腕を解放し、 クロアが離れ、 「大丈夫か?」 ロアの表情を覗き込み、 頭を撫でながら訊ねると、 逡巡の迷いを見せ、 「………クロ…ア…。」 泣いているような声で クロアの名を呼び、 胸に縋り付く。  
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