†兆†

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  聖殿正面“聖本殿” 全てが 白石で造られた聖本殿内。 蔓薔薇の紋様が 細かく施された 窓枠を持つ 幾つもの大窓。 大窓から射し込む光は 屈折の技法を使い 淡い七色の幻想色を 僅かに生み出す細工が入り 天を思わせる高さの天井。 白石の祭壇のみが 正面最奥に厳かに鎮座する 幻想的でありながら 目立つような華美な装飾は 何もなく、 在るのは光が生み出す 空間の装飾だけ。 静謐でありながら 幻想に満たされた空間の中に 正面の大扉からではなく 祭壇側に造られた 聖殿内に続く 重厚な扉から立ち入ったロア達。 「わぁ………。」 思わずロアの唇から零れる 感嘆の溜め息。 「此所は思い出してなかったようですね。」 ロアの反応を見詰め、 微笑むセキル。 「うん……ぁ!でも……少しだけ分かるかもしれない…。」 セキルの言葉に頷きながら、 本殿内をゆっくりと見渡し、 「クロア。」 「何だ?」 「ここには……私を探しによく来ていた……だろう?」 セキルと反対の位置に立つ クロアを見上げ 思い当たる記憶の片鱗に気付き 嬉しそうに訊ねる。  
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