†兆†

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  思わず逃げ出したくなる衝動を ロアは必死で抑える。 クロアもロアの願いを 知っているだけに、 セキルからロアを引き離し、 連れ戻したい衝動に駆られ、 セキルは、 「私がまだ、養子に出る前…叔父上に連れられ聖域の外に出る度に、兄上は此所で、私を見送り出迎えてくれました。」 ロアとの思い出を語る。 「兄上。」 「な…なに…?」 セキルの思い出の話しを 聞かなくてはならないと 思いながらも、 聖域の外に 出たいと願う気持ちが溢れ 混乱するロア。 そんなロアの内心を知ってか、 「“外に出たいですか?”」 「ッッ!!」 問い掛けるセキル。 「兄上?」 「ッ…。」 答えられず、 セキルの問いから逃げたくとも 手を繋がれている以上、 セキルからロアは離れられず、 「兄上、どう…。」 「セキル様ッ!!」 答えられないロアへ、 答えを求めるセキルの言葉に クロアの声が鋭く入った。 「……………………。」 「手をお離し下さい。」 ロアと手を繋ぐ セキルの手の手首の位置を クロアが抑え、 解放を要求する。 「体調が優れない様子なので、部屋へ連れて行きます。」 無言の笑みで クロアを見ているセキルへ ロアを引き離す為の 理由を述べるクロア。  
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