†兆†

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  確かに クロアの言葉の通り、 蒼白に近い顔色になっている ロア。 「なら、私が部屋まで兄上を運ぶ。」 クロアに応えると同時に、 セキルはロアの手を離し、 「セキルッ!!私は自分で…ッ!!」 慌てるロアの言葉を聞く前に、 華奢で小柄な体を抱き上げ、 もと来た通りに帰り始める。 セキルにロアを 連れて行かれれば、 後を追うしか出来ないクロア。 「セキル、降ろし…。」 「兄上。」 セキルの腕から なんとか逃れようと抗うロアへ 「私の前で、クロアとあまり仲良くされると…先程のように困らせたくなりますよ。」 「ッッ!!」 囁く―セキルの忠告。 先程の行動は ロアがセキルの目の前で クロアを頼ったせいだと告げる セキルの言葉に、 ロアは硬直し身を竦ませ、 動けなくなる。 「私は嫉妬深いみたいです。」 セキルに怯え、 抗えなくなったロアへ 穏やかな笑顔で告げる本心。 「ですから、私と過ごす時は、私だけを頼って下さいね。」 明言しない 従いの命が含まれる セキルの言葉。 ロアは 抗いたくとも 抵抗の言葉も声も無く、 ただ、従順に頷き 了承するしか許されなかった。  
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