†兆†

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  「もう、すっかり元気だよ。」 傍まで駆け寄るセキルへ 柔らかく明るい笑顔で 今の体調を告げ、 心配そうに見上げてくる セキルを安心させる。 「良かったぁ。」 ロアの応えと笑顔に セキルは朗らかに笑い、 「外に出られるようになったら、また、たくさん遊んで下さい。兄上。」 にこにこと 無邪気にロアへ甘える。 「うん。あ!でも、激しい動きはもう、出来ないかな。」 ロアもセキルに 明るく応じながら、 両脚の事に触れると、 「ぼく…ッ…私が兄上の代わりに動きますッ!!」 自分を表する自称を言い直し、 元気に宣言する。 もう、二度と走る事の出来ない ロアの両脚。 弟のセキルには 療養中に倒れた時の事故と 説明している怪我。 その事に触れても ロアとセキルの会話が 暗くなる事はなかった。 寧ろ、自然に まるで昔からロアの両脚は 動かなかったかのように 普通の事として受け入れている 優しさと気遣いが 二人の兄弟の間にはあった。  
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