†兆†

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  恐れている筈のセキルを 護りたいと願う心。 原因の分からない 絶望と喪失感。 記憶が無い故の 矛盾、混乱、不安、動揺…。 「……思い……出したく…ないッ…!」 激しい拒絶感。 それでも 思い出さなくてはならない記憶。 「………クロア…。」 何も、 誰も、 分からない事ばかりの 世界の中で、 たった一つ、       セカイ 唯一、確かな存在。 『私はお前の恋人で…、』 「お前だけが…私の全てだ…。」 夜空に溶ける―ロアの呟き。 記憶を喪う前の口調の声の 悲痛な嘆きを ロアが目覚めた時から起きて、 後を追っていたセキルだけが、 静かに聞いていた。  
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