†兆†

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  緩やかな日差しの中庭を ロアはセキルと二人で歩く。 “記憶を思い出すために二人だけの時間を作りましょう。”と、 セキルに言われ、 クロアがロアの後方に 距離を置き控える事で、 形だけでも二人だけとなった 中庭の散策。 「この中庭でよく、兄上と遊んでいました。」 懐かしそうに思い出を話し、 中庭の小道を 慣れた様子で歩くセキル。 ロアは少し遅れながら セキルの後を着いて歩き ぼんやりと話す様子を見詰める。 『セキルは確かに私の弟で…。』 共に居る事で ほんの少し思い出せた夢の記憶。 『本当は優しくて…。』 聖本殿の時のような ロアを追い詰める行動が あったとしても、 夢の中での記憶や今も、 然り気無く、ロアを気遣い、 歩調を併せてくれる事が伝わる セキルの仕草。 知ってしまえば気付いてしまう、 弟としての優しさ。  
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