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『血の繋がった兄弟…だから…。』
それが、
どれだけ特別な事なのか
分からなかったが、
“兄弟の絆”が
確かにある事は分かった。
そんな取り止めもない事を
考えながら歩く。
だが、
その途中で髪を強く引かれ
思わず脚を止めてしまうと、
「あ…。」
風に揺れた長い銀月の髪が、
通り抜けようとした
蔓薔薇のガーデンアーチに
ほんの少し絡まっていた。
“中庭の蔓薔薇によく髪を絡めて立ち往生するだろう。”
ふっと脳裏を過る、
いつかの話。
「また…。」
[また―髪を絡めたかえ?]
「えっ?」
自分の呟きと重なる
どこか透明な知らない声。
驚き声の方を振り向けば、
長い聖銀の髪に
紫水晶の瞳の秀麗な美貌の主が
知らぬ間に傍らに立っていた。
「“兄君。”」
全く知らない筈の相手に対し、
自然と零れる言葉。
途端に、
[本に、お前はよく髪を絡める。]
相手の冷麗とした美貌が
愛おしむ微笑みを浮かべ
柔らかに囁き、
ひんやりと冷たい手が
頬に伸ばされ、
[“―――”]
触れた瞬間―
『――――ッ!!』
心の中で悲鳴が上がった。
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