†重†

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  どこまでも広がる       “碧と翠の世界” “主が造りし物よー。” それが、 二番目に知った      “外”と云う世界。 初めて眼にした世界の色に 初めて知る腕に抱かれる温もり。 ―“ぬし?”― ―“あぁ、お前と呼ぶかの。”― 言葉も声の出し方も知らず ただ、唇から零れた それが、初めての会話。 ―“我のような言よりも、弟等の言の方が良かろうて。”― 何の知識も知恵もない 腕の中の無垢な少年を見詰めて 愛おしむ囁き。 ―“本に創世の神…我らが父は何を考えておろうか…。”― 声の主が見付けるまでは 地下にある美しい水晶の部屋に 一人で置かれていた少年を想う、 哀し気な呟き。 世界を創造する為のモノとして 創世の神に産み出され、 創造の道具として 創世の神の意志の元、 世界の何かを産み出す時以外は 存在ごと封印されていた自分を 解き放ってくれた兄。  
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