†重†

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  ――聖務室内。 壁よりも窓の面積を多く取り 明るい日差しが 部屋の隅々を満たす室内。 大く重厚な執務机と 応接セット。 そして、何故か 執務机の近くの窓辺に 置かれた寝椅子。 聖主はロアを室内に 迎え入れると、 「ここで少しの間、待っていなさい。」 日除け布を降ろした事で 直接の日差しを遮った寝椅子へ ロアを座らせる。 「私はよく、ここで父上と一緒に過ごしていましたよね?」 初めて眼にする筈の空間で 感じる懐かしさ。 示された寝椅子に座ると それは更に強くなり、 自然に思い出す記憶。 「そうだ。お前は、ここで過ごす事が多かった。」 ロアの言葉に穏やかに微笑み、 応える聖主。 幼少期はもちろん、 弟のセキルが産まれた後も、 何かのきっかけで 一人になる時があると 聖主を訪ね、 聖務室へ来る事が多かったロア。 ―“御公務の邪魔をしませんから…居ても良いですか?” ほんの少し心細気な様子で 父、聖主を訊ねて来ていた息子。 「父上の側に…居たかったんだと…思います。」 公務が忙しく遊び等の相手を してもらった思い出は 少なかったが、 側に居る事を拒まれた事は 一度もない父との記憶。  
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