†重†

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  ――第6階層“神殿” 聖司官執務室内では 突然、 登庁してきたクロアの姿に レティスは驚きながも どこか安堵が滲む様子で クロアを迎え入れていた。 「理由は何であれ、正直、お前が登庁してくれて助かった。」 おそらく、 クロアの登頂の原因には セキルが関わっていると 理解しているレティスは、 微かな苦笑を浮かべ 幾つかの書類をクロアに手渡す。 「業務については今のところ、問題はないが、あの子の指示が全くない長期不在は、やはり…他の官達に不安を与えているようだ。」 これまでも何度か ロアが関わる事件が起き、 療養等のために 聖域から出られず 長期不在となる事はあったが ロアはその場合、 常に、己の関わる事件の結果を あらかた予測し、 万が一の為に指示となる資料や 意見、提案書を残し、 可能な場合は聖域から、 直接の指示を出していた為に 特に困る事がなかった。 しかし、 今回は、 正に予想外の事態だった為に ロアからの指示が何もなく、 何より明確な不在の理由と 期間が公表できない為に 一部の官達からは ロアの不在について 不安を表す声が現れ始めていた。  
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