†重†

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  「ここ…は……。」 一瞬、 夢に出てきた相手と 聖主の姿が重なり 混ざり会う“夢と現” ロアは寝椅子に横たわったまま 思わず、聖務室内を見回し 父である筈の聖主を 改めて見詰め直す。 「魘されていた様子だが…?」 うっすらと寝汗をかき 額に貼り付いた髪を 指で退けてやりながら訊ねる 聖主の言葉。 そのまま、 軽く手櫛で髪を梳いてくれる 聖主の掌の感覚に、 ロアは ゆっくりと現実感を取り戻し、 「…それは…。」 夢の内容を確認する問い掛けに 言葉を詰まらせ言い澱む。 とても、 記憶の夢とは思えない夢の内容。 だが、 ロアの中の直感が 記憶の一部だと告げる “不可解な夢” 何より夢の中に出てきた相手と 瓜二つの父。 “本当に記憶なのか?”と、 混乱してしまう意識。 故に 内容を語れず、 落ちる沈黙。 「気持ちの焦りから、悪い夢でも視たか?」 思い悩み塞ぐ様子で 黙り込んでしまうロアに “無理に答えなくて良い”と、 暗に告げる聖主。 その言葉に ロアは戸惑いの表情を浮かべ、 「…父上は……。」 聖主を見詰め身を起こしながら 「“聖銀の髪に紫水晶の瞳を持つ者を御存じですか?”」 夢の中で一番、印象深く、 記憶に焼き付く者の存在を 聖主に問い掛けた。  
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