†重†

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  「目覚めた…事を報せる…?」 強張り震えた声で 聖主の言葉は繰り返すロア。 「そうだ。」 言葉にある髪と瞳を持つロアへ、 「お前の姿は“魔王の目覚めを報せるモノ”故に、この言葉にある姿の者は神族だけにしか誕生せず、誕生すれば聖銀の髪と銀月の髪のどちらかのみ。」 魔王の目覚めを報せる “神族の子供” その為に 義務付けられている誕生の報告。 自分自身が 夢の中の相手が存在しない 証である事と、 魔王進現に関わっている話に 混乱するロアの意識。 そんな中で 「では…魔王の目的は私ではないのですか…?」 自然に零れた言葉。 まるで魔王の目的が 自分自身である事を 願うような呟きは…。 ―“もしも、魔王の目的が私なら…。”― ロアが10歳になった時に 魔王進現の言葉を、 今と同じ、 この聖務室内の この場所で説明し告げた時と 同じ言葉。 聖主は、 その時の事を思い出す。 まだ、 10歳に成ったばかりの息子。 しかし、 16で成人する事を考えれば、 己の負う宿命を知り始めるのに 十分な年齢。 そして、 父である聖主から 魔王進現の言葉を 教えられたロアは、 まだまだ、幼い面に 怯えた表情を浮かべながらも、 ―“魔王の目的は私ではないのですか…?”― 今のロアと同じ言葉を口にした。  
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