†重†

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  成人後、 聖司官の任に就任した後は 独断で聖域を離れ、 第6階層、神殿の 高官達が公務で宿泊する “奥離宮、聖司官専用室”に 居を構え、住み留まっていた。 が、 神殿に住み留まる生活、 日常の日々の中で、 ロアが聖司官執務室と 奥離宮の聖司官専用室から 外に出る事は殆んどなく、 公務が休みの日でさえも 奥離宮専用の庭先に出る以外は 殆んど外に出なかった。 出るとすれば夜半近く、 他の官達の目に ロアの姿が留まり難い時間帯。 神殿の深夜の中庭。 月明かりを頼りに クロアと二人きりで 散策するロアは、 ある時、何気無い切っ掛けで ―“最高責任者が四六時中、居る状況だ。その意識の重圧だけでも、気が休まらんだろうが。”― 淡々と素っ気なく ロアは外に出ない理由を そう、説明した。 自分が神殿に住み留まる事で、 他の官達が受ける重圧、 負担を理解し、 せめて、姿を見せない事で、 それ以上の重圧、負担を 他の官達にかけまいとしていた ロアの行動。 ―“ここに私が居るのは、ただの我が儘だ。”― 成人するまで、 聖域、聖殿から出されずに育ち、 知人と呼べる者が 片手で数えられる数の身内しか 居なかったロア。  
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