†重†

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  熾天使長執務室から 出て行こうとする その背中に、 「叔父上、父上は何を考えていらっしゃるのですか?」 唐突に 聖主の意を訊ねるセキル。 何の前触れも無い、 今、交わした会話の 口調のままでのセキルの問いに ミレアは 「聖主の考えが解る者など、誰も居らん。」 一度、脚は止めても セキルに振り返る事なく そう応え、退出した。 再び、セキル一人となった 熾天使長執務室。 夕刻から 既に夜の帳へと 移り変わり始めている時刻。 その逢魔が刻の薄闇に 溶け込み始める陰。 ロアの記憶が喪われた日の 翌日から、 時折、何者かの気配を 身の回りで感じるセキルは、 「つまり、何らかのお考えがあると、言う事ですよね…。」 夜の帳を窓から見詰め、 一言、静かに呟いていた。  
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